障害年金の裁定請求に一度失敗した場合、再度申請し成功することは極めて困難となります。すなわち、最初の申請こそが勝負となります。
しかしながら、年金事務所の説明では「請求者の視点」が欠けていたり、時間不足のため充分な説明がなされていないことがよくあります。
市役所や年金事務所が請求者の立場に立っていないことは,必要な用紙をもらう段階でわかります。あまりにも不誠実な態度に,誰でも必ず一度は腹を立てることになります。
一方障害年金申請については、民間の社会保険労務士の多くが、この仕事がかなりの経験を要することや、手間がかかる割には報酬が低いことなどの理由により、敬遠する傾向にあります。
障害年金の代行申請は、単なる手続き代行ではありません。「支給」の可能性を高めるための様々な工夫をして申請致します。
申請手順については、「8.申請手順」をご参照ください。
目 次
1.障害年金の受給要件
2.初診日
3.障害認定日
4.障害年金申請の種類
5.障害の程度
6.診断書
7.必要書類
8.申請手順
9.納付要件
10.複数の障害
11.年金額の改定
12.併給調整
13.申立書
14.受給年金額
15.現況届
16.所得制限
17.不服申立
18.障害厚生年金と障害基礎年金
説 明
1.障害年金の受給要件
障害年金の受給要件とは、障害年金を受給できるかどうかを検討する時の最も基本的な要件です。要件は3つあります。
(1)加入要件
初診日に、国民年金、厚生年金、共済年金のいずれかに加入していたことが要件となります。この加入していた制度が、受けられる障害年金の種類となります。
(2)納付要件
初診日の前日において、初診日の前日において、初診日の前々月までに一定の納期間が要求されます。
(3)障害状態要件
認定日かつ現在または現在の障害の状態が、障害基礎年金の場合は2級以上、障害厚生 および共済年金の場合は3級以上であることが要求されます。体的には、障害認定基準・認定要領で判断されます。
2.初診日
初診日は、障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。すなわち、障害の傷病名と因果関係がある傷病で初めて受診した日をいいますが、この日を特定することはたやすいことではありません。
因果関係については、例えば以下のように取り扱われています。
○ 糖尿病と糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症
○ 肝炎と肝硬変
○ 手術による輸血と肝炎
× 糖尿病と脳出血、脳梗塞
× 高血圧と脳出血、脳梗塞
3.障害認定日
障害認定日とは初診日から1年6ヶ月経過した日をいいます。 ただし、傷病が固定した場合は1年6ヶ月以内でもその固定した日となります。 また以下のような、認定日特例があります
① 人工透析開始→開始日から3ヶ月を経過した日
② 人工骨頭または人口関節を挿入・置換→挿入置換した日
③ 心臓ペースメーカーまたは人工弁装着→装着日
④ 切断又は離断による肢体の障害→切断、離断した日
また、脳血管障害の場合、6か月以上経過した日で症状が固定した日を言います。
4.障害年金申請の種類
初診日に加入していた年金により、障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金いずれかを申請することになります。
①認定日請求
認定日の障害の状態を診断書で証明します。認定日より1年を経過している場合は、現在の症状を記載した診断書も追加して必要です。
受給権は認定日翌月に発生します。
②事後重症による請求
現在の症状を診断書で証明します。
受給権は請求月翌月に発生します。最もシンプルな方法です。
③初めて2級による請求
今まで3級以下の障害があった人が今回の障害(3級以下)と併合認定してもらうことに
より2級以上に該当する場合をいいます。納付要件や加給年金の要件については、すべて後の障害を基準に判定します。受給権は請求月の翌月に発生します
実際には、申請例はまれにあるだけです。
5.障害の程度
障害の程度は、認定基準および認定要領により判断されます。
認定基準では抽象的表現により障害等級が定められ、認定要領で細目が定められていす。しかしながら、認定要領だけでは判断できないことが多く、ここが障害年金の支給・不支給決定が都道府県や決定時期により大きなバラつきがある原因となっています
6.診断書
診断書の種類は8種類あり、傷病により以下のように分類できます。
ただし、例えば脳腫瘍で精神疾患の症状が出た場合は、120号の4か120号の7にするかは一概には決められません。
様式12号の1 眼の障害用
様式12号の2 聴覚、鼻空機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害用
様式12号の3 肢体の障害用
様式12号の4 精神の障害用
様式12号の5 呼吸器疾患の障害用
様式12号の6-(1)循環器疾患の障害用
様式12号の6-(2)腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用
様式12号の7 血液・造血器、その他の障害用
7.必要書類
①年金請求書
②診断書
③受診状況等証明書(初診の受診機関が診断書作成機関と異なる場合)
④病歴、就労状況等申立書
⑤住民票、戸籍謄本(配偶者、18歳未満の子供の有無、二十歳前障害により異なる)
⑥配偶者の所得証明書(障害厚生年金で配偶者がいる場合)
⑦年金を振込先通帳の写し
以上のほかに、場合により身体障害者手帳の写し、受診状況等証明書が添付できない理由書等があります
8.申請手順
①申請のシナリオを決める。
まず年金事務所に行き、納付記録をもらいます。そして納付要件を満たしているか確認します。納付要件は、初診日が決まらないと確認できません。意外に難しいのが、この納付要件です。役所で、特に市役所で「満たしていない」といわれた場合は専門家に確認してください。2度市役所で「納付要件を満たしていない」といわれ、当事務所で計算したところ、満たしていたケースがありました
・初診日を決める
・認定日の診断書の取得可能性を検討する
その後、認定日請求か事後重症か決める
② 診断書入手
初診日証明が必要な場合は「受診状況等証明書」、受診状況等証明書が入手できない場合は「添付できない理由書」を作成します。
③ 申立書作成
経緯が申立書だけで理解できるように書きます。できればワープロで<作成するほうがいいと思います。
④必要な添付書類(住民票、戸籍謄本等)の入手
⑤ 裁定請求書作成
⑥ 裁定請求
必ずコピーをとって置きます。不服申立の時は必ず必要になります
年金事務所の相談員は、マニュアルにこだわるあまり、時系列で記載するときことを軽視する傾向にあります。すなわち、病院ごとに1つの欄に書くことにこだわる傾向にあります。あくまでも時系列ごとに書くことが重要です。
9.納付要件
障害年金を受給するためには以下の2点をクリアーしていることが必要です。
① 加入要件:初診日に国民年金または厚生年金、共済年金に加入していること
② 納付要件:初診日の前日において要件を満たしていること、具体的には下記のAまたはBの要件を満たしていることが必要です。
A 「3分の2要件」
初診日の前日において初診日の前々月までに加入すべき期間の3分の2以上が保険料納付または免除期間で満たされていること。
B 「直近1年要件」
初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納期間がないこと
・平成3年4月以前に初診日がある場合、初診日の直前の「基準月」(1月、4月、7月、10月)の前月までの月数をいれます。
・第3号被保険者手続きが漏れていた場合でも、手続きを行うことにより2年前まで遡って保険料納付済み期間となります。ただし、第3号の届出特例により届けた場合は、届出以降の日からしか納付済み期間の扱いとされません。
・昭和61年3月以前に初診日がある場合は、上記と異なりますので注意が必要です
10.複数の障害
複数の障害が有る場合、基本的には以下のような考え方となります。
①初診時期が同じ→それぞれの障害を併合。
内科的疾病の併存は総合認定。
②初診時期が異なる → 前・後発障害ともに2級以上は併合認定
→ 前発障害2級で後発障害が2級に満たない場合は併合認定<
→ 前発・後発とも2級に満たない場合は「初めて2級」
ここで重要なことは、併合認定では、受給要件(加入要件、納付要件、障害の状態)はすべて前発・後発障害いずれにも満たしていること。
「初めて2級」の場合は、受給要件は後発障害でみることです。
11.年金の改定請求
障害等級の変更である改定は、現況届に基いて職権で行われる場合と、本人の改定請求により行われる場合があります。
〔 本人による改定請求 〕
障害年金の受給権を取得した日、または社会保険庁の診査を受けた日から1年を経過した日。診査を受けた日とは、「給付に関する処分を受けた日」のことです。
ただし、一定の場合は1年を経過しなくても額改定請求ができる場合があります。
ほかに、年金の受給権を取得した当時胎児であった子が生まれた場合は、2級以上であれば、子の加算額 が請求できます。
12.併給調整
併給調整とは、同一人に複数の社会保険給付が生じた場合、年金についての調整が行われることをいいますが、これは労働保険給付との間でも行われます。
13.申立書
病歴・就労状況等申立書(「申立書」)は、申請者が作成します。
一定の年数ごとに、主な診療の記録や日常生活の状況、就労状況等について記載します。受診病院ごとに区切る方法や、主な出来事があった場合に区切る方法があります。重要なことは、診断書で読み取れない申請者の生活状況等をわかりやすく記載することです。
年金事務所の相談員は、マニュアルにこだわり、3年~5年ごとに作成、受診機関ごとに作成、ということを頑なにアドバイスするため、申立書が作成できないようになる場合があります。当事務所では申立書の意義を考え、最良の作成方法をアドバイスできます。
14.受給年金額(平成29年度)
(1)障害基礎年金
1級 974,125円+子の加算
2級 779,300円+子の加算
子の加算
第1子・第2子 各 224,300円
第3子以降 各 74,800円
(2)障害厚生年金
下記の金額+障害基礎年金の金額
1級(報酬比例の年金額) × 1.25 + 配偶者の加給年金額(224,300円)
2級(報酬比例の年金額) + 配偶者の加給年金額(224,300円)
3級(報酬比例の年金額) ※最低保障額 584,500円
報酬比例の年金額の計算式
従前保障
( 平均標準報酬月額×7.50/1000×平成15年3月までの被保険者月数
+ 平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以降の被保険者月数 )
×0.997
※被保険者期間が、300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算
また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金額計算の基礎とはされ
ません
15.現況届
障害年金等を受給されている方のうち、障害の程度を確認する必要がある年金受給者の方については、医師等による診断書の提出が必要となります。この場合には「障害状態確認届の提出が必要となります。この届書はこれまでの現況届と同様、誕生月の前月末ごろに社会保険業務センターから送付されます。
現況届は毎年提出が必要ですが、診断書の提出が必要なのは、人により異なり1~5年の範囲で提出します。
16. 所得制限
初診日が20歳前の障害基礎年金の場合、本人に所得制限があります。
半額停止の場合、子の加算額を除いた金額の半額が停止となります。
所得制限の上限額は以下のとおりとなります。
全額停止限度額 4,621,000円
半額停止限度額 3,604,000円
なお扶養親族がいる場合は、上記の金額に以下の金額が加算されます。
特定扶養親族 1人につき63万円
老人控除対象配偶者、老人扶養親族 1人につき48万円
上記以外の扶養親族 1人につき38万円
*特定扶養親族とは16歳以上23歳未満
老人とは70歳以上
17.不服申立
年金請求をした結果、その決定(年金の受給権や障害等級)に不服があるときは、決定書の謄本を受け取った日の翌日から3か月以内に不服の申立ができます。これを「審査請求」といいます。審査請求は、社会保険審査官に行ないます。
社会保険審査官の行った決定に不服のあるときには、決定書の謄本を受け取った日の翌日から2か月以内に社会保険審査会に対して再審査請求をすることができます再審査請求を行い、社会保険審査会の裁定に不服があるときは、裁判所に行政訴訟を起こすこともできます。
18.障害基礎年金と障害厚生年金
受給する障害年金の種類は、初診日に加入していた年金の種類で決まります。国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金となります。したがって、初診日の決め方が非常に重要な要素となります
長崎県諌早市の障害年金専門の社会保険労務士 ニュウタウン社労士事務所
障害年金の相談、代理申請、不服申立(審査請求、再審査請求)
長崎市 諫早市 佐世保市 大村市 島原市 南島原市 雲仙市 西海市 平戸市 松浦市 壱岐市 対馬市 五島市 長与町 時津町
長崎県諌早市の障害年金専門の社会保険労務士 ニュウタウン社労士事務所
障害年金の相談、代理申請、不服申立(審査請求、再審査請求)